講師紹介 >> 大磯義一郎

医療法学のすすめ

私は、元々は消化器内科医として働いていました。しかし、私が卒業した1999年は、都立広尾病院事件や横浜市立大の患者取り違え事件といった世間の耳目を騒がせる事故が相次いだ年でもありました。
当時は毎日のように新聞やテレビのワイドショー等で医療事故が取り扱われ、医師はコメンテーター等からボロボロに非難されていました。そのような影響か次第に患者さんの医師に対する態度は変わっていき、「出るとこ出てもいいんだぞ」、「訴えてやる」といった言葉が院内で日常的に聞かれるようになっていました。
そのような中、国際的に異常ともいえる刑事司法の介入が行われ、当時、労働基準法を全く無視した過酷な労働環境下でも患者さんのためにと診療をしていた友人も捜査の対象となり、結果的には単なる合併症として不起訴とはなりましたが、そのショックで鬱状態となり大学を辞めてしまいました。
このまま医局の隅っこで愚痴を言っていても埒が明かないと感じていた折に、ちょうど司法制度改革によりロースクールができるという記事を目にし、それならばとロースクールに進学することにしました。
その後、様々な先生方との出会いがあり、司法修習後に国立がん研究センターにて知財業務をしたりしたのち、医学部に帰ってきて医療と司法の相互理解の促進をテーマに「医療法学」の研究をするようになりました。
「医療法学」というとなかなか聞きなれないかと思いますが、今では国家試験の30~40%を占める公衆衛生学の約半分は医療関連法規についての出題となっています。
医療紛争だけでなく、医療安全、医療関連法規はまだまだ整理ができておらず、研究テーマの宝庫となっています。皆さんにはなかなか馴染みのない研究領域かもしれませんが、この機会に「医療法学」の世界を少し覗いてみませんか?